高校駅伝:男子の強豪・大牟田高に女子チームが誕生

 

男子が5回の全国制覇を誇る大牟田高(福岡県大牟田市)の駅伝部に今季、女子チーム

が誕生した。部員は1年生のみ6人。陸上経験者が2人しかいない素人集団だが4月の発

足から7カ月を経て、力をつけてきた。都大路の切符をかけた来月2日の男子第59回、

女子第20回全国高校駅伝競走大会福岡県予選(嘉麻市)で、23連覇を期す男子に負け

じと鮮烈デビューを狙う。

女子部は、03年の総合学科開設で増えた女子生徒の体育系部活動の強化を目指して発

足した。福岡は全国制覇3度の筑紫女学園高、昨年県予選初制覇の北九州市立高など強豪

がひしめくが、赤池健・男子部監督(36)が地元で情報を収集。大牟田市と隣の熊本県

荒尾市から6人が入部した。うち3人は中学時代にバスケットボール部、1人はバドミン

トン部だ。

女子部監督には、赤池監督の日体大時代の後輩で、実業団のJAL・AGS(現JAL

グランドサービス)で活躍した宇野淳さん(32)を招いた。

創部当初、6人は三千メートルが11〜12分台だったが、男子をペースメーカーに引

っ張ってもらい速さを体感した。「男子は雲の上の存在だったが『自分たちも強くなりたい』

という向上心が芽生えた」と宇野監督。諫早高(長崎県諫早市)や大分西高(大分市)な

どと合同練習を組み、強豪校の名にも慣れさせた。

 男子部員28人の大半は寮生活だが、女子寮は満杯のため6人は自宅から通学している。

荒尾市の2人は宇野監督が午前4時半に起床して車で迎えに行き、早朝練習に間に合

わせる。また学校近くにある赤池監督の自宅を合宿所として、日体大陸上部出身の妻もやい

さん(35)の手料理で体調を整える。

 こんな周囲の熱意を支えに6人は伸び、今では練習で三千メートル9分台の選手が4人に

なった。5日の初レース「くらよし女子駅伝」(21・0975キロ、鳥取県倉吉市)では

1時間14分11秒、全国85チーム中17位に入った。

 宇野監督は「できすぎ。まだ順位にこだわるだけの力はない」と謙そんするが、選手

はその気だ。「今年は県で3位を狙い、3年生で優勝したい」と西田真伊主将。県内は筑紫女

学園高と北九州市立高が抜き出ているが、3位に入れば全九州高校駅伝(11月16日、沖縄)

の出場権が得られる。上野麻耶選手も「前半から積極的に走る」と意気込む。

 女子の奮闘に、都大路で過去4年2けた順位の男子部員も触発された。5日の日本海駅伝

(42.195キロ、倉吉市)では2時間6分34秒で2位に入った。06年2月に大見治夫

前監督(現日本文理大付高監督)の後を継いだ赤池監督も「男子は初め、素人の女子を冷めた

目で見ていたが、成長ぶりに刺激を受けている」と、相乗効果に笑みがこぼれる。

 将来の目標は都大路のアベック制覇。新たな歴史の1ページ目となる県予選の走りに注目だ。

 

毎日新聞 10月24日【藤野智成】